アルミサッシの不思議

                                               

  先日、ある建材器具会社の社長の講演を聞く機会があり、①日本の住宅の断熱性能が国際的に見て非常に劣っていること、②家全体が集中冷暖房でないため、家の中での寒暖差による死亡事故が多いこと、を教えられました。
 これまでも新聞雑誌記事により、日本に来た外国人の多くが、冬場の日本の住宅は寒いと言っていることや、アルミサッシというのは日本特有のもので、アルミは熱伝導率が高いため熱が逃げやすい、といった程度の知識は持っていました。しかし、住宅の断熱性能がイギリスやドイツの半分程度で、国による規制もない、というのは愕然とする情報でした。しかも、いわゆる大手住宅メーカーの製品も例外ではなく、むしろ、知識のある一般工務店で家を建てた方が、コスト的にも安く断熱性の高い住宅を手に入れることができる、というのですから、ますます驚きます。
 断熱性能が高ければ、冷暖房設備も少なくてすみますし、家全体を冷暖房することも可能になります。今後の日本の住宅は、断熱性能の向上と集中冷暖房の方向で改善していかねばならないでしょう。ちなみに、アメリカの住宅は、1970年代頃までに集中冷暖房が一般化しました。
 家の熱が逃げていくルートの7割方は窓とのことですから、断熱性能の向上には、窓の改良が欠かせません。窓を構成するのは、ガラスと窓枠ですが、ガラスについては、すでにかなり性能の良い物が開発されているようです。問題は窓枠です。アルミに代わる熱伝導率が低く加工しやすい素材の開発が必要なのです。
ところで、日本では、いったい何故、熱伝導率の高いアルミを窓枠に使うようになったのでしょうか。
 この問について、筆者の素人仮説は、「鉄道車両に起源があるのではないか」です。というのも、住宅にアルミサッシが利用されるようになったのは、昭和40年代頃だと思うのですが、それ以前の昭和30年代初めころから、鉄道車両ではアルミサッシの利用が始まっていたからです。
 当時の日本の鉄道は不燃化と輸送力増強が喫緊の課題でした。不燃化のためには、半鋼製車両(外板や枠組みは鋼製でも、屋根、窓枠、床板等が木製だった)を全金属にする必要があります。また、輸送力増強には、車両を軽量化して、機関車の牽引両数をあげなければなりません。
このような要請を考えると、金属の中でも軽量なアルミを車両の窓枠に利用するのは理にかなっています。車体に高価なアルミを使うのは無理でも、窓枠程度にはいいだろうということだったのではないでしょうか。
鉄道車両用のアルミサッシを開発したメーカーが、それをヒントに住宅用のアルミサッシを開発して販売したのではないか、と考えた次第。果たして、真相はどうなのでしょうか。ご存じの方がいらしたら教えて欲しいと思います。(2019年12月8日)